2021.04.16

防災を楽しく!――プラス・アーツに見る防災の新しい考え方②

楽しみながら防災の知恵や技を学ぶ新しいカタチの防災訓練や防災啓発の取り組み――「防災は楽しい。」を合言葉に、様々なプロジェクトを展開しているNPO法人プラス・アーツ。前回はその活動の発端と、阪神・淡路大震災の被災者の生の声から生まれたキモチの防災マニュアル『地震イツモノート』について紹介いたしました。

今回はさらに、まとめられた情報から同時にプログラム化され、開発されたユニークな防災イベント『イザ!キャラバン!』を中心に、プラス・アーツならではのアイデアが詰まった数々の取り組みについてご紹介します。お話を伺ったのは、前回に引き続き東京事務所のチーフスタッフ・服酉信吾さんです。

プラス・アーツ東京事務所チーフスタッフの服酉信吾さん。団体職員、NPO法人、民間企業と渡り歩いて2016年にプラス・アーツに入社。現在は主に商業施設での防災イベントに携わっている。

イザ!カエルキャラバン!誕生す

イザ!カエルキャラバン!』とは何か。それはひと言で言うなら、家族や友達と楽しみながら防災知識が身につくイベントです。通常の防災プログラムと違って、小さな子どもでも楽しみながら学べるプログラムとなっています。スタートしたのは2005年。その大枠は、地域の防災訓練プログラムとおもちゃ交換会「かえっこバザール」を組み合わせたもの。プラス・アーツの代表理事・永田宏和さんが、美術家の藤浩志さん(現プラス・アーツ副理事長)の作っていた「かえっこバザール」の仕組みに注目して声をかけたことで形となります。

服酉さん「『かえっこバザール』では、子どもたちが遊ばなくなったおもちゃを持っていくと<カエルポイント>がもらえます。それで、そのポイントで会場に集まったほかのおもちゃと交換することができるんです。でも、ポイントは使っちゃったらなくなりますよね。すると会場にはいろんなワークショップブースがあって、そこで何かしら体験をするとポイントをゲットできる。ポイントをどんどん稼げば、よりたくさんおもちゃを手に入れられるというわけです」

ワークショップブースには、体験してもらいたいけど普段なかなかやってもらえないことがあり、それを子どもたちに教えることができるということ。『イザ!カエルキャラバン!』では、ワークショップとして“楽しい”防災訓練プログラムがいろいろと用意されていて、子どもたちは防災体験に参加して、楽しく学びながらカエルポイントを貯められる仕組みです。

カエルポイントを使って、自分の好きなおもちゃをゲット!

「水消火器で的あてゲーム」「毛布で担架タイムトライアル」etc.…

たとえば、「水消火器で的あてゲーム」(イザ!消火作戦!)では、カエルや火を模した的を水消火器で狙い、いくつ的を打ち抜けるか競います。子どもたちにとってはシューティングゲーム感覚。最初に災害時の火災についての説明や、消火器の取り扱い方を学んで、実際に水消火器を使い、消化器の水を使い切るまでにどれだけ打ち抜けるか、的あてゲームをするわけです。「毛布で担架タイムトライアル」「ジャッキアップゲーム」(いずれもイザ!救出作戦!)。前者は、身の回りにある毛布で応急的に担架を作り、けが人を搬送する方法を体験を通して学ぶことができるプログラム。参加した子どもたちはチームになって、けが人に模したカエル人形を力を合わせて安全迅速に運ぶ。スタートからゴールまでタイムトライアル形式で競います。後者は、地震直後の救助で重いタンスなどの転倒物の下敷きになっている人を助ける場面を想定。日頃馴染みのないジャッキという道具の機能や使い方を知り、実際にジャッキを使ってナマズ人形に押しつぶされたカエル人形を助けます

「毛布でタイムトライアル」。毛布を担架替わりに運ぶカエル人形は、一人で運ぶには大変な重さ。
「ジャッキアップゲーム」。ナマズ人形に押しつぶされたカエル人形をジャッキで救出!

服酉さん「ほかにもたくさんプログラムはあって、年々増えています。いずれも子供がゲーム感覚で楽しみながらできるという要素を多めに入れているのが特徴。プログラムはどれもそれほど複雑ではなく、地域のおじいちゃんなども一緒に参加できます。それとプログラムに使っている機材のカラーとかたとえばカエル人形とか、象徴的なキャラクターをデザインするなどブランディングをしっかりしています。運営スタッフはキャラを印刷したバンダナを身につけたり、そんな工夫で一体感のある楽しいイベントにしています」

前回ご紹介した『地震イツモノート』同様、イラストレーターの寄藤文平さんのデザインによるキャラクターが、確かにユニークで親しみやすい雰囲気を与えています。その上で、押さえどころとして大切なのは、楽しみながらちゃんと学習できることだと言います。

服酉さん「何で僕らがこれをやるかという原点は、プラス・アーツが被災者の方達から教えていただいた事実をちゃんと知ってもらうことです。知識や備えがなかったことで大変な思いを2度と経験してほしくないし、そういう苦労をしてほしくない。ですから、何でこういうことが必要か、なぜみんなに知ってもらいたいのかという前提条件をきちんと伝えることで初めて意味を成す。ちゃんと学ぶ、遊びで終わらせないということはポイントです」

大人も主体性を持って参加することで“自分ごと”に

それはイベントに参加する子どもたちについてだけの話ではありません。イベントを実行する大人たち、プラス・アーツからいうとクライアントの側の人たちがより主体性を持って、自分たちの企画として行うことが大切であるようです。

服酉さん「『カエルキャラバン』でもその他のイベントでもそうですが、どちらかというとクライアントの側の方々の意識を高めていただき、企画に参加することによって“自分ごと”になっていくというのがポイントです。いざ実行するとなったときには僕らは行っても最大2人くらい。イベントを実行しているのはほぼクライアント側の人たちなんです。そこで、たとえば応急処置の話一つにしても、主体性を持って自ら参加すれば、1日に相当数の子どもたちに繰り返し話をすることになる。するともう強制的に身についてしまうんです(笑)」

義務感で参加する防災訓練でなく、楽しみながら学べる防災体験プログラム。2005年に神戸で産声をあげた『イザ!カエルキャラバン!』は、今ではさまざまな企業や行政、地域団体などと協働しながら、全国各地で開催され、世界にも広がっています。また、2011年の東日本大震災や近年各地での豪雨や台風による水害などを経験された方々の声ももとに、さらに数々のプログラムが開発・改良され、万が一の震災時に役立つ実践的な内容になっています。

プラス・アーツが開発・発信してきた防災プログラムは、ほかにも避難生活の擬似体験を通じて学ぶ『レッドベアサバイバルキャンプ』や防災と演劇を掛け合わせた体験型の『防災博士の挑戦状』、さまざまな企業とのコラボ企画などまだまだたくさん。気になる方は、ぜひプラス・アーツのホームページに訪れて確認してみてください。『イザ!カエルキャラバン!』については、公式ウェブサイト(下記)もあり、開催マニュアルのダウンロードもできるので、そちらもぜひ。

NPO法人プラス・アーツ http://plus-arts.net

イザ!カエルキャラバン! http://kaeru-caravan.jp

連載第1回記事は こちら

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