イラスト:にしぼりみほこ

大阪府警の元刑事・折元洋巳さんに聞くマンション防犯術。数々の空き巣を取り調べてきた折元さんならではの、犯罪者目線で見る防犯テクを教えていただきます。

怪しい人は近づけない環境づくり

――前回は、防犯テクのウソ・ホントをうかがいました。それをふまえて、本当に効果がある空き巣対策を教えてください。

折元さん(以下、折)「当たり前ですが、空き巣は警察に捕まるのが一番の恐怖です。

空き巣は現行犯逮捕のケースが非常に多いんですね。空き巣が家の中を物色している間に目撃者が警察に通報、ひと仕事終えて家から出てきたところを逮捕、というパターンです。

空き巣側からすると、誰かに見られていたのが失敗の原因です。つまり裏を返せば誰かが見ている状態を常につくっておくことが大切といえます」

――私の母は見知らぬ人が家の近くをウロウロしていると『なにか用事ですか?』とすぐに声をかけています。

折「とても大事なことです。そのためには〝ご近所づきあい〟が大切ですね。むかしは、おじいちゃんおばあちゃんが縁側で井戸端会議をしている光景がよく見られました。そんなブロックに空き巣は入りません。怪しいと思われたら終わりですから。

井戸端会議はできなくても、マンションの居住者同士でコミュニケーションをとったりするといいでしょう。親しくするまではいかなくても、どんな人が住んでいるかをわかっているだけで、防犯対策になります」

駐輪場とゴミ捨て場を要チェック

――空き巣はどんなマンションを狙うのでしょうか。

折「空き巣がチェックするのは、駐輪場とゴミ捨て場です。長年使った形跡のない錆びた自転車が置いてあるところは入りやすい。管理が行き届いていない=人の目がない、ということですから。

空き巣は、マンションにとって自分が〝異物だ〟と自覚しています。だから自分が目立たないことを重視します。ふつう、錆びた自転車は駐輪場にとって〝異物〟ですよね。

その異物に気づかない、排除されないということは、空き巣がいても気づかれにくいマンションだ、と判断します。

ゴミ捨て場も同様です。決められたゴミの日以外にゴミが出ているマンションは要注意。空き巣に狙われているかもしれません」

――では、どうすればよいのでしょうか。

折「共有スペースをきちんと整理整頓することですね。そのためには管理組合の役割も重要です。放置自転車やゴミ問題は、見た目だけの問題ではなく、空き巣対策にもなることを知っていただきたいです。

また、管理人さんがいるマンションでは、見知らぬ人への声かけを徹底しましょう。管理人室になるべくいてもらうのも大切です。誰かの目があるだけで、空き巣は嫌な場所だと認識します」

防犯カメラは効果が薄い

――防犯カメラをつけているマンションも多いですね。

折「防犯カメラは良し悪しです。じつは、空き巣はそれほど防犯カメラを気にしていません。なぜなら、犯行現場から逃げてしまえば捕まる可能性が低くなるので、たとえカメラに映っていようと関係ないのです。

防犯カメラを嫌がるのは、夜中にたむろっている若者や不法投棄をする人。空き巣に全く効果がないとはいいませんが、効果的ではありません。

また、以前私が防犯相談を受けたマンションでこんなことがありました。防犯カメラはついているのですが、夕方になると西陽が当たって逆光になり、人がボーッとしか映らない。これでは防犯カメラの意味がありません。私が指導して、適切な場所に付け替えてもらいました」

花壇やイルミネーションで人の目を引き寄せる

――折元さんおすすめの防犯対策を教えてください。

折「繰り返しになりますが、空き巣対策に大切なのは〝人の目〟です。〝みんなの目は無料の防犯〟と私は言っています。

みんなの目を集めるためにおすすめしているのは、花壇づくりです。季節ごとにきれいな花が咲く花壇があるマンションは、手入れが行き届いているとわかるので、空き巣は近づきません。また、花を話題に近所の人が井戸端会議をすることもあり、自然と人の目が集まります。

同様に、クリスマスのイルミネーションも効果があります。

空き巣の侵入を防ぐために、槍のように先のとがった柵で囲いをしているところがありますが、空き巣はそれほど気にせず入ってきます。見た目も怖く、心がささくれだちますよね。

それよりも花壇をきれいにしていたほうが、空き巣対策にもなり、住人の心も豊かになり、一石二鳥です」

――そのためには、マンション全体での防犯対策が必要ですね。

折「具体的な防犯対策は、死角がどのぐらいあるか、空き巣が使えそうな電柱があるかなどそれぞれのマンションによって異なるので、一概にこれがいいとは言えません。

最近は、さまざまな防犯グッズが出ていますが、それも建物の立地や構造によって効果のほどは変わります。

世の中の99%は大多数は善人です。空き巣などの悪人は少数。その少数のために必要以上にお金をかけたりして防犯対策をする必要はない、と私は考えます。

防犯対策に悩んだら、一度プロに頼んで〝防犯診断〟をしてもらうのも一手です」

【取材協力】

折元洋巳(おりもと・ひろみ)

元大阪府警・巡査部長。留置所の看守として犯罪者と多く、また親しく面倒見をしていたことから、多くの警察官も知り得なかった犯罪者の本音を知っている。退職後に一般社団法人・全国防犯啓蒙推進機構を立ち上げ「犯罪者目線から語る防犯対策」などをテーマに防犯啓蒙活動を展開している。

折元さんが理事長をつとめる全国防犯啓蒙推進機構では、マンションの立地や構造などを踏まえて、防犯上注意すべき点やおすすめ改善法をアドバイスしています。うちのマンションを見てほしい!という方はウェブサイトのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

「元刑事に聞く!マンション空き巣対策〜その1」はこちら

全国防犯啓蒙推進機構のウェブサイトはこちら

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