2021.08.29

「隣の部屋がゴミ屋敷!一体どうする?」 弁護士が教える!マンション住民のための法律講座&相談 第3回

イラスト:おくむらゆきな

自分たちが住んでいるマンションをより知るために、マンション住民に必要ないざというときに役に立つ法律知識を学ぶ「マンション住民のための法律講座&相談」。教えていただくのはマンションの法律問題に詳しい弁護士の田村 裕樹先生です。第3回は、実は今増えているといわれている“ゴミマンション”の問題。法律での解決策を伺いました。

今回の相談

「隣室の部屋の中にゴミ袋が溜まっていて、ゴミの数がどんどん増えてきています。玄関も足の踏み場もないくらい物が積んであって…。「ゴミ屋敷化」を止めてもらう方法はありますか?」

ゴミやモノが山積みになって、生活スペースもないほどにモノがあふれかえっている「ゴミ屋敷」。一戸建てのケースはよくとりあげられることが多いですが、マンションでも同じく起こりうること。それが隣室のことともなると、ベランダからこちら側へはみ出してくるのではないかと、住人にとっては気が気でない問題です。ゴミ部屋にするのを止めてもらう方法はあるのでしょうか。

ゴミと家財を区別することは難しい

「部屋に立ち入ってゴミを撤去すること」これができればいいのですが、問題は,第三者には「ゴミ」に見えるものでも、その部屋の主にとっては価値がある「所有物」である場合があることです。

田村先生「法律上、ゴミ部屋をどう処分するかは、なかなか難しい部分があります。まずは住人の許可なく室内に入ることができません。そのため、ゴミの詳しい状況が分からないことが多いのです。また、他の人から見れば無価値で誰のものでもない「ゴミ」でも、その部屋の区分所有者にとっては、価値を感じて所有している場合があります。ゴミかどうかは簡単に判断できない場合が多いのです。」

部屋を「使用禁止」にすることは可能だがゴミの撤去は…

それでも、ゴミを部屋の中にあふれかえらせたり、臭いや害虫が出るなど、実際に他の住人の生活に支障があることが認められれば、できる対策もあるということです。

田村先生「専有部分に大量のゴミをため込んだり、悪臭を放ったり、害虫を発生させる行為は『共同利益違反』(区分所有法第6条第1項)に該当すると考えられます。この共同利益違反行為に該当するかは、他の区分所有者が我慢すべき範囲を超えているかどうかを事案ごとに判断します。裁判で共同利益違反行為だと判断されれば、専有部分を使用禁止(区分所有法第58条第1項)にすることができます。」

ただ「使用禁止」だと、それ以上ゴミは増えませんが、すでに溜まっているゴミが撤去されるわけではありません。ゴミの撤去まで行うにはどうしたらよいのでしょうか?

田村先生「仮に、別途ゴミの撤去を訴訟で求めて判決を得たとして、問題があります。ゴミマンションでは、部屋の中に家財道具がゴミと一体となって埋もれていることが多く、ゴミと価値ある家財とを区別して強制執行することが困難です。単純に全てをゴミとして撤去することができないのです。また、『ゴミ屋敷条例』などを制定している自治体もあります。お住まいの自治体によって条例の内容もさまざまなので、担当窓口に相談してみてはどうでしょうか。」

最終手段である「競売請求」事前の予防こそが重要

田村先生「使用禁止期間があけてもゴミが無くならないという状況が続くなら、共同生活上の障害が著しく、競売以外の手段では共同生活の維持が困難である、ということを訴えて競売請求(区分所有法第59条第1項)を行い、専有部分にある家財を含む全ての動産を撤去することが考えられます。」

どんな事案にしろ「ゴミマンション」の問題は、マンションごとに状況が異なるため、時間と根気がいる手続きになることが多いようです。

田村先生「このように,いったんゴミマンションが生じると、その解決には難しい問題が生じます。そこで,こうした事態を事前に防ぐ努力が大事になります。普段からの清掃活動や住民間での声かけ,これらによる連帯感の醸成によって、ゴミマンションの芽を事前に摘むことが重要ですね。」

先生の回答のまとめ

「共同の利益に反する行為の停止等の請求」(区分所有法第57条)、「使用禁止の請求」(区分所有法第58条)によって解決できない場合のみ、「競売請求」(区分所有法第59条)ができる。ゴミマンションの芽を摘むために普段からの住民間の活動が重要。

弁護士が教える!マンション住民のための法律講座&相談シリーズ

第1回 「マンション住民が知っておくべき法律基礎知識」はこちら

第2回 「廊下に物を置いている人がいて片付けてくれない」はこちら

監修:田村裕樹(たむらひろき)/弁護士。京都府出身。東京大学文学部(日本文学)卒。都内出版社にて編集職に従事。一橋大学法科大学院修了。青山学院大学院修士(税法務))修了。東京弁護士会所属(61期)。企業法務、不動産法務、税金に関する法務、知的財産権法務、一般民事法務、家事法務など多岐の分野にわたって活躍。マンション法務に関する造詣も深く、講師経験も多数。マンションに関する著書に『専門士業と考える 弁護士のためのマンション災害対策Q&A』(第一法規株式会社、共編著)、『マンションにおける共同利益背反行為への対応—区分所有法57条 58条 59条 60条の実務』(日本加除出版、共著)がある。

弁護士 田村裕樹:https://tamura-bengoshi.com

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