イラスト:おくむらゆきな

今回のご老公からの一言

「安くしなさい」と言っただけで、1カ月に400万円下がった所もありますからね。」

「マンション購入」は、多くの人にとって人生で1度か2度の大イベント。そのため、購入のガイドブックや雑誌・WEBの記事も多く出回っていて、「失敗しないためのチェックポイント」も広く知られています。しかし、その人生最大級の買い物の「その後」について、つまり「マンションの維持・管理」については、何か問題が発生するまで、ほとんどの人が無関心なのではないでしょうか?

すでにマンションを所有している人も、これから購入しようと考えている人も、問題発生を未然に防ぐため、あるいは問題発生時に適切に対応できるよう、マンション管理に関心を持つことでより良い管理体制を築いておきたいものです。その際に心強い味方になってもらえるのが「マンション管理士」。マンションの維持・管理で頻発する諸問題に詳しく、「マンション管理士」の第一期生として長い間、数多くのマンションのトラブルを解決してきた長尾英俊さんに、お話を伺いました。

その管理費、ムダに多く払っていませんか?

【編集部】「マンション管理」を区分所有者の立場から見ると、様々な問題があるということですが、最初に、多くのマンションでみられる問題点について教えていただけますか? また、そうした問題に、「マンション管理士」がどう関わって、解決に導いていただけるのかについても教えてください。

【長尾さん】まず最初に、みなさんに問いかけたいのが、「あなたのマンションで管理会社に払っている管理費は、真っ当でしょうか?」、「ムダなお金を払っていませんか?」ということ。

新築の分譲マンションを購入した多くの人が直面する問題として、毎月のマンション管理費が高すぎるという問題があります。私はよく言うんです、「だいたい、2割から4割は高いですよ」と。もちろん、全部が全部そうではないですが、知識がないために必要以上に高い金額を払っている所は多いですね。

新築マンションの入居時には、半ば強制的に、すでにどこかのマンション管理会社が入っていますよね。これは、そのマンションを造ったデベロッパーの子会社とか、紐付きの管理会社が入っている場合が多いんです。マンションを新築で購入して入居してくる人たちというのは、「管理費の相場はいくら」なんて、ほとんどの人が知りません。だから、いくらですと言われたら、「そうなんですか」と言われるままに払ってしまう。だけど、入居時には住民(区分所有者)による管理組合ができるわけだから、実際に住んでみて感じたことなどをもとに1年目に管理費を見直してみて、管理会社と交渉をするべきなんですよ。

【編集部】でも、その管理費が妥当かどうかなんて、チェックできる人は普通は住民・区分所有者の中にはいませんよね?

【長尾さん】そうしたチェックができて、ムダを削減するなど、住民・区分所有者をサポートするのが「マンション管理士」です。現在の管理費は適正か? 相場より高くないか? もっと安く契約できる手段はないのか? また、管理委託契約書に示されている業務内容はきちんと実施されているのか? マンション管理士はそうした内容をチェックして、ムダなお金の流出を抑えます。

私自身の体験でも、管理会社に「管理費を安くしなさい」と言っただけで、1カ月に400万円下がった所もありますからね。そこは800戸以上が入る大きなマンションでしたから、1カ月に払っている総額が1,400万円にもなっていたんです。そこの管理組合から管理費見直しの依頼を受けて、「これまで内容を精査していなかったけど、これからは精査するよ」と管理会社に言ったら、それだけで翌月に400万下げてきました。そのぐらいいい加減なんです。それでも普通の方は知らないから、ずっと最初に設定された無駄に高い管理費を払い続けてしまう。私のようなマンション管理士が入ってきちんとチェックするだけで、大体2割から4割は安くなりますから。

マンション管理士がチェックするのは、管理会社との間で取り交わされる「管理委託契約書」で計上されている管理費用が、相場と照らして妥当なのかということ。あるいは、管理会社を変えるなどして、もっと安く契約できる方法はないのか。そして、契約書に書かれた業務内容がちゃんと実施されているかなど。信じられないでしょうが、実際にはやっていないのに、計上されている業務があったりするんですよ。

きちんと行われていない業務としては、清掃関係が多いですね。「廊下は何曜日と何曜日に掃除する」とか、「週に1度はエントランス周辺の草取りをする」と具体的に書かれているのに、それが行われていないことがある。でも、管理委託契約書を調べて、きちんとチェックする区分所有者なんてほとんどいませんから、野放しになっていることが少なくない。

私がチェックした案件では「これやってない、あれやってない」と1つ1つ指摘していって、該当する業務の1年分の費用を戻させたこともありました。

ひどい管理会社だと、毎月一回開催すべき管理組合の理事会を手配もせず、年に一度の総会の前に一度だけ理事会を開かせるというケースもありましたね。戸数の少ないマンションで、住民・区分所有者の参加意識が低い所では、管理組合の役員選任も半ば強制的です。そうすると、役員を任せられた人の側も、理事会開催が少ない方が負担も少ないので、「毎月開催しないのか」と異議を唱えることなく、管理会社のずさんなやり方に流されてしまうこともあるんです。

マンション管理士っていくらかかるの?

【編集部】マンション管理士に管理費や管理委託契約書のチェックしてもらうことの重要性はよくわかりました。それで、「管理士に仕事を依頼したい」となった場合、料金はどのくらいかかりますか? 何か基準はあるんでしょうか?

【長尾さん】料金に決まりはないんです。案件によっても違うし、管理士によっても違ってきます。

先ほどお話した「管理費の削減」を例にすると、削減できた金額に応じて報酬額を決めたりします。具体的な金額は、ケースに合わせて管理士と管理組合との交渉になりますね。

例えば、1カ月の管理費を数十万円削減できたら、その1カ月から数カ月分を報酬として受け取る管理士の方もいるようです。管理組合にしてみると、何もなしなければ同じ金額をずっと払っていたわけですから。削減できた分を数カ月間支払えば、その後は管理費がグッと安くなって、その下がった金額が続いていきます。結果的に年間で数百万、数千万削減できるなら、そっちの方が全然お得だし、節約した管理費を修繕積立金に回せたりもするわけです。

「管理会社の管理費を安くします」という業務を専門に行っているマンション管理士もいて、そういった広告を打ってる人もいます。

ただ、それだけがマンション管理士の仕事ではありません。

私の場合は、そういった個別の課題解決型の案件も受けていますが、管理組合に顧問として勤めていることも多いですね。私は月額で、だいたい3万円から6万円ぐらい。月一回の理事会に出席して、何か問題が発生したときにアドバイスしたり、管理会社が持ち込む補修工事などの内容や金額をチェックしたり。それでムダな出費を抑えたり、管理組合の運営をもめ事なく行えるようにサポートしているわけです。

マンション管理士を顧問を置くことによって、問題が起きたり不備に気付いてからではなく、事前に問題が起きないようにしたり、不備に気付いたりすることができ、マンション管理をスムーズに行うことができる。他にも管理会社が持ち込んでくる補修工事や大規模修繕なんかも問題山積みで、そういった問題にもマンション管理士は管理組合や住民の方の心強い味方になることができます。

次回は「マンション管理士への依頼はどうやってすればいいのか?」ついてお話を聞きます。

お話を聞いた方:長尾 英俊 株式会社 ケア・ジャパン代表取締役。マンション管理士(東京都マンション管理士会所属、元城北支部長)、宅地建物取引士。また、マンション建て替えコンサルタントとして、平成19年度国土交通大臣賞受賞。2001(平成13)年に実施された第一回のマンション管理士試験で資格を取得した、経験豊富なスペシャリスト。管理会社とのトラブルや管理費等滞納問題、大規模修繕工事コンサルタント、建替え(自主再建)など、幅広く活躍中。

<マンション管理士とは?> マンション管理士試験の合格とその後の登録が求められる国家資格。マンションの管理に関して、管理組合や区分所有者からの相談に応じ、管理組合の運営、管理規約の改正や長期修繕計画の策定など、マンションの維持・管理に関する幅広い問題について解決を支援する総合コンサルタント。マンション管理士登録者は全国で約2万5千人(令和元年)。

その他おすすめの記事

記事ランキング

  1. 1

    マンション歳事記 重陽の節句編 和洋折衷、キク科の花を使ったフラワーアレンジメント

    2021.09.15 暮らし
  2. 2

    マンションの音はこうして伝わる! <1>壁・床の仕組みを知ろう

    2021.08.04 マンショントリビア
  3. 3

    ペットと暮らすマンションライフ 第3回〜ペット飼育の細かい決まりは「管理規約」にあり!〜

    2021.06.21 困ったときに
  4. 4

    おうちで楽しむクラフトビール[国産編]第3回 人気のIPA、ヘイジーIPAって何?①

    2021.09.08 おうちグルメ
  5. 5

    【IT×家電】ニトリやイケアでも購入できる便利なスマート照明とは?4回目

    2021.06.28 アツマロトピックス