2021.07.27

「廊下に物を置いている人がいて片付けてくれない」 弁護士が教える!マンション住民のための法律講座&相談 第2回

イラスト:おくむらゆきな

自分たちが住んでいるマンションをより知るために、マンション住民に必要ないざというときに役に立つ法律知識を学ぶ「マンション住民のための法律講座&相談」。教えていただくのはマンションの法律問題に詳しい弁護士の田村 裕樹先生です。第2回はどの集合住宅でもよく発生する身近な悩みごとについて、法律での解決策を伺います。

今回の相談

「廊下に、板などで囲って物置みたいなものをつくって物を置いている住人がいて困っています」(神奈川県 Y・Nさん)

マンションの廊下に自転車や子どもの遊具などの物を置いていて、注意されたり、注意したり…ということは、経験したことがある人も多いのではないでしょうか。大抵の場合は、注意されたら「すみません、気をつけます」と言って片付けて解決する問題です。しかし、板で囲うなどしてすぐに移動できない状態が続いている場合は、どうしたらよいでしょうか。

マンションには「専有部分」と「共用部分」がある

こういった居住者間の問題は、口頭で話し合って解決できるのが一番望ましいことです。しかし、撤去を求めても片付けてくれないとなると、法律的な手段も含めて対応を考える必要がでてきます。

田村先生「まず,マンションは大きく二つの部分に分けられます。分譲マンションの各個室のように、独立して住居や事務所としての用途に使える部分を「専有部分」と言います。区分所有権は、この専有部分を対象としています(区分所有法2条3項)。専有部分では無いその他の部分を「共用部分」と言います(区分所有法2条4項)。」

専有部分は、各区分所有者がその用途に従ってある程度自由に使えるイメージがありますが、共用部分はどうでしょうか。

※マンション等の集合住宅の「共用部分」は「共有スペース」と表現されることがありますが、共用部分には窓ガラスや玄関ドアなども含まれます。この場合「共有」されておらず「スペース」でもないため、注意が必要です。この記事ではマンション住民の方に正しい法律知識を知っていただくために、「共有スペース」という言葉は使わずに「共用部分」を使用していきます。

共用部分でやってはいけない「共同利益背反行為」

田村先生共用部分はマンションの区分所有者全員で共有し全員で利用すべき部分なので、管理組合が管理します。各区分所有者が、自分の専有部分と同じように共用部分を使ってはいけません

マンションは多くの人が一つの建物を利用していますので、その利用方法も個人の自由とはいきません。区分所有法では『区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理または使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。』(区分所有法6条1項)とされています。この禁止されている行為を「共同利益背反行為」といいます。

共同利益背反行為は他の住民との関係が重要ですので、専有部分と共用部分では禁止される行為の範囲が異なります。例えば、専有部分(例えば自分の部屋)で禁止されるのは「騒音や振動、臭気を発生させる」「暴力団事務所に使う」などです。

一方、共用部分はそもそも自分の部屋のように使える場所ではありませんから、共用部分に勝手に物を置いたり建物を作ったりする行為は禁止されます。つまり、専有部分で許される行為も共用部分では許されない場合があります。

今回は、廊下という共用部分に、板で囲った物置を設置していますので、「共同利益背反行為」にあたると考えられます。ただし、共同利益背反行為にあたるかどうかは様々な要素を比較して検討しなければなりませんので、事案ごとに異なるものであることに留意しましょう。」マンションによっては、共用部分の使い方について利用規約や使用細則などを設定しているので、その場合は規約などに従っているかどうかもポイントになるようです。

法的根拠に基づいて「やめるように請求する」

田村先生「こういった共同利益背反行為に該当するケースは、いくつかの手段をとることができます。迅速にこうした行為を中止させるため、行為をやめて結果を除去し、あるいは予防するような措置を相手に請求することができます(区分所有法57条1項)。ご相談の事件では、物置を置くことが「共同利益背信行為」に当たる可能性があり、同条に基づいて、他の区分所有者全員または管理組合法人は、その行為の停止を求めることができます。標準管理規約(単棟型)第67条1項では、管理組合の理事長が同様の請求をすることができます(ご自身のマンションの管理規約を確認しましょう)。それでもやめてくれない場合は、裁判手続を執ることも考えましょう。」

先生の回答のまとめ

「共同利益背反行為」が疑われる場合は、まずはその行為がどこでおこなわれているのか、マンションの専有部分なのか共用部分なのかを検討しましょう。そのうえで、共同利益背反行為にあたるかどうかを考えましょう。

弁護士が教える!マンション住民のための法律講座&相談シリーズ

第1回「マンション住民が知っておくべき法律基礎知識は」こちら

第3回「隣の部屋がゴミ屋敷!一体どうする?」はこちら

監修:田村裕樹(たむらひろき)/弁護士。京都府出身。東京大学文学部(日本文学)卒。都内出版社にて編集職に従事。一橋大学法科大学院修了。青山学院大学院修士(税法務))修了。東京弁護士会所属(61期)。企業法務、不動産法務、税金に関する法務、知的財産権法務、一般民事法務、家事法務など多岐の分野にわたって活躍。マンション法務に関する造詣も深く、講師経験も多数。マンションに関する著書に『専門士業と考える 弁護士のためのマンション災害対策Q&A』(第一法規株式会社、共編著)、『マンションにおける共同利益背反行為への対応—区分所有法57条 58条 59条 60条の実務』(日本加除出版、共著)がある。本多総合法律事務所。

弁護士 田村裕樹:https://tamura-bengoshi.com

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