2021.10.22

「駐車場に不審な車がとまっている……」 弁護士が教える!マンション住民のための法律講座&相談 第6回

イラスト:おくむらゆきな

いざというときに役に立つ法律知識を学ぶ「マンション住民のための法律講座&相談」。教えていただくのはマンションの法律問題に詳しい弁護士の田村 裕樹先生です。第6回は、「駐車場のトラブル」。マンションの出入り口として多くの人が利用する駐車場は、トラブルが起きやすいところです。法律から見た解釈と対応策についてうかがいます。

今回の相談

「マンションの駐車場に、ときどき見たことがない車が駐車してあります。使っていいスペースは部屋ごとに決まっているので、無断駐車ではないかと思うのですが……」(神奈川県 K・Tさん)

マンションの駐車場で適用されるルール

駐車場はマンションの一部でありながら、室内と違い外に向かって開かれたスペースでもあります。とはいえ、見知らぬ車がたびたび駐車していると気になるものですが……。

田村先生「マンションの駐車場は住民ではない人が使用する場合があるので、ちょっと面倒なところがありますね。

駐車場内でトラブルが起きた場合、まず確認したいのは、そこが『専有部分』なのか『共用部分』なのかという点です(※『専有部分』、『共用部分』については第2回参照)。

『駐車場は共用部分じゃないの?』というイメージをお持ちの方も多いと思いますが、必ずしもそうではなくて、特に屋内駐車場は法的な定義による検討が必要な場合があります。管理組合にこの点を確認してみましょう。」

『使用細則』は具体的な使い方を定めるルール

『専有部分』と『共用部分』の確認ですね。自分で調べることはできないでしょうか?

田村先生「最終的には裁判所の判断になるくらい複雑な問題なので、専門家のアドバイスをもらった方がよいでしょう。

それから、マンションの駐車場の使用方法を定めるルールが主に2つあります。『管理規約』と『使用細則』です。

『管理規約』はマンション全体のルールのこと。『使用細則』は、『管理規約』に付け足すかたちで決められた、より細かいルールのことです。駐車場についてはおそらく両方に書かれていると思いますが、どの住民がどのスペースを使ってよいか、住人以外のゲストがとめてよいか、あるいはとめてはいけないのか、など詳しいことは『使用細則』で定められていることが多いです(個別の使用契約がある場合もあります)。

少し複雑になってしまったので簡単に整理すると『専有部分』か『共用部分』かの違い、そして『使用細則』で定める内容、これによってルール違反の意味が違ってくるということになります。」

ルール違反でない可能性も

K・Tさんのケースはどのように解釈されるのでしょうか?

田村先生「『共用部分』である場合、使ってよい人かどうかは『使用細則』(または個別の使用契約)で決まっています。

K・Tさんのケースでは、見慣れぬ車が『使用細則』で使用が認められる住人の新車や別の車だった、という可能性があり得ます。当然その場合はルール違反ではありません。

それから、使用が認められる住人のゲストは使ってよいと『使用細則』で決まっている場合、これもOKです。

駐車場が『専有部分』である場合もおおむね同様に考えてよいでしょう。

ルール違反になるのは、使用する権利のない住民が駐車している場合。これは『共同利益違反行為』に当たり、認められない行為です(※『共同利益違反行為』については第3回参照)。もしまったく関係のない人が勝手にとめている場合、これはマンションのルールと関係なく、単なる不法行為です。

では実際問題として、K・Tさんがどう対応すればよいかというと……車を見ただけではどのケースかわからないところがやっかいですね。駐車のルールが決まっているとのことなので、おそらく駐車場の『使用細則』が定められていると思います。しばらく様子を見てから管理組合に問合せる、というのが一般的な対応ではないでしょうか。」

ルール違反の駐車車両は撤去できる?

住民で駐車してよい場合としてはいけない場合、住民以外で駐車してよい場合としてはいけない場合、どの可能性もあるということですね。管理組合に問合せて、もしルール違反の車が住民のものだとわかった場合、自分たちで撤去することはできるのでしょうか。

田村先生「いいえ、それはできません。裁判を経ずに勝手に撤去することは法的に許されていない行為です。気持ちはわかりますが(笑)。

ルール違反の駐車が長引いた場合などは、管理組合が裁判所に自動車の撤去請求(区分所有法57条1項)をすることが考えられます。判決を得られれば、執行官に強制的に撤去してもらうことができます。裁判の過程で車の持ち主が自発的に撤去することもあり得るでしょう。」

「駐車場の空き問題」が増えている

「ルール違反の駐車は撤去してもらえる」と思っていたので、ルールが細かく決まっていることに驚きました。

田村先生「そうですね。対応が大きく違ってくるわけではないのですが、法的にはそれぞれ規定があります。

ところで、マンションの駐車場に関する問題でこのごろ増えているのが、『駐車場の空き』なんですよ。

駐車場の空きが増えると維持がむずかしくなって、特に機械式駐車場などは相当なコストがかかりますから、一人ひとりの負担を増やさなければならなくなる。では駐車料金なり管理費なりの金額を上げる、あるいは駐車場を廃止することが簡単にできるかというと、住民の同意を得るという点で法的には相当たいへんなんです。

車がなければ生活が成り立たない地域がある一方で、駐車場が不良債権化しているマンションが増えてきています。少子化や若者の車離れの影響で車の販売台数が減少しているので、おそらく今後もこの傾向は続くでしょうね。また、空いた区画を外部に貸す場合は会計・税務上の問題があります。

これからマンションの購入を検討される方は、ご自身のライフスタイルにとって『駐車場が必要かどうか』というところもお考えになったほうがよいと思います。」

先生の回答まとめ

「マンションの駐車場で適用されるルールは、主に『使用細則』。ルール違反かどうか見ただけで判断することはむずかしいので、まずは管理組合に問合せする。状況によっては撤去請求もできる。最近の傾向として『駐車場の空き』による問題が増加しており、今後も続くことが予想される。」

弁護士が教える!マンション住民のための法律講座&相談シリーズ

第1回「マンション住民が知っておくべき法律基礎知識は」こちら

第2回 「廊下に物を置いている人がいて片付けてくれない」はこちら

第3回「隣の部屋がゴミ屋敷!一体どうする?」はこちら

第4回「何の音? 突然上の階から異様な物音がするようになった!」はこちら

第5回「「下の部屋で水漏れ発生。加害者になってしまった?」はこちら

監修:田村裕樹(たむらひろき)/弁護士。京都府出身。東京大学文学部(日本文学)卒。都内出版社にて編集職に従事。一橋大学法科大学院修了。青山学院大学院修士(税法務))修了。東京弁護士会所属(61期)。企業法務、不動産法務、税金に関する法務、知的財産権法務、一般民事法務、家事法務など多岐の分野にわたって活躍。マンション法務に関する造詣も深く、講師経験も多数。マンションに関する著書に『専門士業と考える 弁護士のためのマンション災害対策Q&A』(第一法規株式会社、共編著)、『マンションにおける共同利益背反行為への対応—区分所有法57条 58条 59条 60条の実務』(日本加除出版、共著)がある。

弁護士 田村裕樹:https://tamura-bengoshi.com

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