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第1回 いざという時のために…マンション住民が知っておくべき法律

田村裕樹弁護士

自分たちが住んでいるマンションをより知るために、マンション住民に必要ないざというときに役に立つ法律知識を学ぶ「マンション住民のための法律講座&相談」。教えていただくのはマンションの法律問題に詳しい弁護士の田村 裕樹先生です。第1回は「マンション住民が知っておくべき法律」についてお話をお伺いしました。

マンションと戸建てでは違う法律が適用される?

戸建てもマンションも、不動産という点では同じです。一方で、何が違うのかといいますと、マンションは「集合住宅」であるということ。分譲マンションを購入する場合、それは建物全体ではなく、その中の1室を所有するということになり、法律においても「区分所有法」※が適用されます。

この場合、戸建てと何が変わってくるのでしょうか。例えば「区分所有法」が適用される集合住宅では「建物の修理や工事などは1人=1世帯の意向では決められない」といったことが起こります。マンションが集合住宅であるところ、その中には個人の持ち物となる部分(専有部分)もあれば、全員で所有している部分(共用部分)もあり、共用部分については一人の意見でどうするか決めることができないからです。当たり前のことですが、ここが戸建てとマンションが決定的に違う点です。

マンションにお住まいの皆さんにまず知っていただきたいのは、大前提として、マンションは「1つの家(建物)にいくつもの住戸・世帯が集まって暮らしている共同体」であるということです。

マンションに住むということは「他の家族と建物を共有して暮らす」ことである、という意識を持つことが必要です。

※正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」。

管理組合の運営や建て替えに関する法律も

住民1人(1世帯)では決められないマンション内の事柄を仕切るのが居住者同士で構成される管理組合です。管理組合理事による理事会、住民が参加する総会を開き、マンションに関するさまざまな議題を提起し、決定し、実行していくのも、集合住宅の大きな特徴です。

マンション管理組合の理事会や総会の開催なども含め、管理組合の運営は区分所有法に則り規定された管理規約に従って行われます。その点で、管理規約はマンション管理にとって法律と同様のものだと言えます。マンションにとっての法律である管理規約をより知ることも、区分所有法を知ることと同様に大事です。

また、最近よく話題になるのが「古くなったマンションの建替え問題」です。この問題に関係する法律が、「マンション建替え円滑化法」です※2。

マンションの建替えをスムーズに進めるためのさまざまな手続きや方法が定められています。もしお住まいのマンションで建替えを検討することになった場合、「マンション建替え円滑化法」は調べておくべき法律でしょう。※2­正式名称は「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」。

マンション管理の意外な盲点「税法」

マンション管理に関係してくる法律の中で、「税金」にまつわる「税法」も知っておいた方がいい知識です。例えば、マンションに併設されている駐車場における消費税の扱いは、少しの違いで税区分が変わってくることがあります。

マンションの住民(組合員)が敷地内の駐車場を使用する際に管理組合に使用料を払うケースがありますが、この使用料について消費税は不課税となります。

しかし、これを組合員以外に貸し出した場合には、消費税が課税されます。このケースは比較的わかりやすい例ですが、これ以外にも「え、これで税金かかってしまうの?」ということがありますので、特に管理組合の収入・支出=マンションとしての収入・支出の中で何に税金がかかるのか、といった事柄には注意を払う必要があります。

「民法」や問題解決のための訴訟法に関する知識も

もちろん、より一般的な法律も基本としておさえたいところです。

まずは、全ての市民生活の基礎となっている民法です。他人と一つの建物をともにしている「区分所有」という特殊性があるとはいえ、“所有権”を規定している「民法」はやはりマンションにおいても法律関係の基本になります。たとえば、マンションが古くなったから壊して処分するということは、原則として住人全員の合意がないとできません(一部例外あり)。これは民法にそのように規定されているからです(民251条)。

また、マンション管理組合の理事は、問題が起こったときに法的な解決を目指す必要に迫られることがあります。弁護士に代理人を依頼するとしても、理事として訴訟とはどういうものかという知識があるとより良い問題解決の助けとなるでしょう。そのため、ある程度の民事訴訟法などの訴訟法の知識を押さえておくべきです。

1人で決められないからみんなで決める!参加する意識を!

ここまでマンション管理とこれに関わる法律についてお話しました。

繰り返しになりますが、マンションとは、「1つの家(建物)にいくつもの住戸・世帯が集まって暮らしている共同体」であり、建物や住民(区分所有者)全体の生活に関係することは「住民みんな」で決めていかなければいけないということです。みんなで決めていくときにその拠り所の一つとなるのが管理規約であり、区分所有法などの法律です。みなさんがマンションに関係する法律の知識を得ていく過程で、マンション全体の問題に目を向け、「大事なことはみんなで決める」ということ、そしてそれに「参加する」んだという意識をより強くもたれることを願っております。法律というと、取っつきにくい、むずかしい印象があるかもしれませんが、アツマロでは今後、田村先生の監修の下、マンションで問題になりがちな具体例とともに、みなさまが知っておくとよい法律知識を、わかりやすくご紹介していきます。

監修:田村裕樹(たむらひろき)/弁護士。京都府出身。東京大学文学部(日本文学)卒。都内出版社にて編集職に従事。一橋大学法科大学院修了。青山学院大学院修士(税法務))修了。東京弁護士会所属(61期)。企業法務、不動産法務、税金に関する法務、知的財産権法務、一般民事法務、家事法務など多岐の分野にわたって活躍。マンション法務に関する造詣も深く、講師経験も多数。マンションに関する著書に『専門士業と考える 弁護士のためのマンション災害対策Q&A』(第一法規株式会社、共編著)、『マンションにおける共同利益背反行為への対応—区分所有法57条 58条 59条 60条の実務』(日本加除出版、共著)がある。

http://honda-partners.jp/lawyers-tamura.htm

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